私が働いているこの獣医師業界、細かく言うと小動物臨床業界にも、他の業界と同じように新人が入社してくる。そして先輩あるいは上司が新人教育をし、その新人がいずれは先輩獣医師として後輩を教育するという当たり前のサイクルで成り立っている。
新人を教育する立場になってあらためて思うことはたくさんある。自分が指導を受けていたときはどのように教えてもらっていたか?厳しい(厳しすぎる)叱責をいただいたこともあれば、優しく諭してもらったこともある。その結果として臨床獣医師としてある程度のことができるようになった今の自分があるわけなのだから、自分も時に優しく、時に厳しく、そんな風に導いてあげるのが一人の獣医師としての責任なのだろう。
しかし、実際にやってみるとなかなか思い描いたようにはいかない。どうしてももどかしく、イライラしてしまうのだ。どうしてこんなこともわからないのか?どうして簡単な採血も上手くできないのか?どうしてできないのにもっと勉強や練習に時間を費やさないのか?それなのにどうして誰よりも早く退勤するのか?
自分が少しできるようになると、途端に他人の粗ばかり目についてしまうものなのだろうか。ふと思い返すと、あー、これ全部自分が新人のときに先輩や院長に言われてたことだよなと。確かに新人のときの自分は知識もなく、不器用で、そのクセ人よりも努力しないという、今の自分から見れば何一つ取り柄のない新人だったんだなと気付く。
ただ、当時はまったく自覚していなかった。なんでこんなに私ばかり怒られるんだろう。どうして上手くいかないんだろう。そんな言い訳ばかり考えて、その答えに気付くこともできずに藻掻き続けていた。
結局、大学を卒業したての学生気分の新人なんて大多数がそんなものなんだと思う。怒られて、上手くいかなくて、挫折して、そういう風に社会の荒波に揉まれていく中でその答えにたどり着ければいいんじゃないかな。ただ、人よりちょっと不器用でぼーっとしてる人間もいて、そんな子には早めに客観的な自分の姿を教えてあげることがこの業界の先輩としての役割なのかなと、自戒の念を込めてそう思います。時に優しく、時に厳しく。